不動産マーケット雑感①(Capital、オフィス、レジ)

今年、特に足許半年程度とそして来年の不動産マーケットについてのメモ。屋や個人的な雑感です。

 

1.Capital Market

不動産アセットへのエクイティ(以下、EQ)投資家の投資意欲は非常に強い。EQの出し手は国内そして海外両方とも、だ。

 

(1)海外EQ

APACを対象とした不動産投資枠にEQが積み上がっている。と言ってもAPACにおける不動産投資マーケットの結構な量がJapanというのは実態だと思う。これは、①米国と比較すると劣後するが、Marketの情報量・透明性及び流動性は高い、②Marketの規模が大きい、③Yield Gapが確保できるというのがあります。そのため、Fund Riseした資金のDry Powderの大半を振り向けんと、結構AMには投資プレッシャーが掛っている気がしますね。ぶっちゃけ結構な札を入れるのも彼らな気がします(特に物流アセット)。

 

Korean EQが投資意欲が強かった一方、今年の日韓の政治的な緊張の高まりから、特に年金・公的系がEQのDealでBreakした、と言う話を聞きました。実際、Docsの最中にFallという事例もあったようです。然し乍、Koreanが全て引いたか、というとさにあらず、一部Korean Fund勢が継続投資をしているようですね。また、公的系も結局本邦バリに忖度を働かせていたのですが、どうもほとぼりが冷めたら。。。というスタンスも一方であるようで、恐らく20年春ごろからは再度動きが出てくるのでは、と言う気がしています。

 

China系については、シンガポールを経由して入ってきてるイメージがあります。正直Greater Chinaには日本には考えられない規模で金を持っている個人或いはFamily企業があるので、正直驚きです。。。

 

(2)国内

クジラ、所謂GPIFやゆうちょ・かんぽといった郵政ファミリーについて。この人たちも資金量が正直凄い。

 

GPIFはご存じの通り?証券会社や農中などをGateKeeperとしてファンドの選定をして、そこで選ばれたファンドに資金を3ケタ億で突っ込む、というスタイルです。従って、個別のDealは特に・・・という感じですか。面白かったのは、個別のDealに首を突っ込みだすと、そもそも規模が小さいので不経済、と言う事もあるのですが、所謂「政治家が口を横から指してきてぐちゃぐちゃになるリスク」を恐れていると言う話も聞きます。なるほど。。。

 

郵政ファミリーは不動産ファンド投資に前向きでしたが、かんぽの問題が噴出してから、ほぼ全てのDealがHD本部決裁になっている様で動きが取れていない様です(一部関係者へのヒアリング)。ただ、これも問題が一通り整理がついたら再度出てくるのだろうな、と。野村不動産の買収も考えていた位ですからね。郵政不動産を軸に現物での開発もやりだすかも?。

 

個人的に興味深いのは一部JA。JAさんは結構な組織が中央機関である農中に投融資機能を移管しているそうですが、一部JAは未だ自分で投資をしている様で、欧州の不動産(ファンド)、新興国のインフラファンドにも出資している様で、これはすごいなあ、と。。。

 

生保も現物の取得意向が強い印象があります。第一生命は私募REITの立ち上げを考えている様ですね。彼らは不動産Marketの薄日が差してきたステージから投資をしてきたので、そこそこCapitalが期待できそうです。

 

地銀は地域REITの創設への動き、私募REITの投資口への投資意欲が強い様です。まあ、アパートローンでの動きが封じられたら安定的なアクルーの収益が確保できて時価がそんなに動かないもの、となると限られる訳でしょうからね。

 

こうしてみると、引き続き「機関投資家」における投資意欲は強い、と言えるでしょう。実際、コーポレートの投融資(ベンチャー系を含む)には不透明さもある中で、賃貸借契約で目に見えやすいCash Flowのある不動産に資金が流れ込むのは正直やむを得ない気もします。

 

2.オフィス

オフィスマーケットが堅調だったのは既にご認識の通り。渋谷での賃料が一部ビルで50,000円/坪にタッチしたとか、大阪のオフィスマーケットでは空室がごくわずかという話は衆目を集める所です。

 

(1)WeWorkの影響

足許、かなり大型のオフィス供給が成されたものの、結果的に空室が非常に限られている状況は、多分にWeWork(以下、WW)による消化が要因であることは間違いないと思います。ニュースでWWの経営不振とSoftBankの尻拭いが話題になったのは最近の話ですが、WWの借りている賃料自体は本邦においては、「そこまでバカ高い賃料では無い」と言うのが印象です。まあ、高いのですが、Marketの上限程度かな、という感で、実際、近い人に聞くと収支は悪くない、と言う話が漏れ聞こえてきます。

 

とは言え、借りるとなると結構なOfferでGSIXの少人数ブースの契約で一カ月60万円と、坪単価に直すと多分10万円近いんじゃないかな、という水準、ですがまあ、大赤字で死ぬ、と言う感じではないと。さて、どうみるか。まあ、転貸の賃料水準を引き下げても直ぐに逆ザヤで死ぬ、という感じはなさそうですが。

 

(2)渋谷、そしてStart Up

上述の通り、渋谷の賃料水準がエライことになっている、と言う話をしました。スクランブルスクエアの様な足許供給されたばかりの物件だけで無くて、MarkCityの様なもう20年近くが見えてきた物件でも坪4万円を目指している様で。。。

 

とは言え、ですが仲介の中の人の話を聞くと、どうもリーシング期間がやや長期化している様子。賃料の上昇をけん引しているのは一部の企業っぽい、と言う話も聞きます。さて、どうでしょうか。景気次第、ではありますが、VCの目が厳しくなると、そんなに高い賃料を正当化(例えば、優秀な人材を集めるなど)することも中々厳しくなるかもしれません。

 

(3)前向き移転って?

企業がオフィスを変えるのは中々ストレスの居る仕事です。中で働いている人の交通費の云々、レイアウト云々、客への紹介、名刺等印刷物の変更、etcこれは大変というしかない。

 

それでも移転する理由は結局3つ。①コスト削減、②移転による効率化(複数に分散しているオフィスの集約)、③良い立地・高スペックビルへの移転による従業員満足の向上、人材確保、といったもの。

 

足元では①よりも②や③の理由が大きいのですが、最近はどうも増床移転よりも減少移転の方が多いとのこと。立地やスペックは良いものを選びつつも、床面積は縮小してGrossでの賃料は抑える、といった感です。これは、どうも企業側も業績の行方にそこまで自信が無いのかもしれません。

 

あと、こうした減床移転する企業のいシュートして、フリーアドレスの導入・在宅勤務の導入で、従業員が全員入るスペースを端から確保するのはせず、やや足りなくなる?ことも覚悟している感もある気がします。営業マンは日中出ているだろうし、いざとなればサービスオフィスを借りる、みたいな。これも未だWWの業績改善余地を残している、と考える理由の一つでもあります。

 

(4)Tokyo Office Market

18年から20年までは東京において、オフィスはかなりの大量供給です(でした)。大体、この10年の年間平均供給量が30万坪程度だったのですが、この3年で130万坪と莫大な規模で供給されました。単年度で多かった年として12年の50万坪、と言うのがありますが、それ以降は30万坪を下回っていますから、この3年が如何に莫大だったかが理解できます。

 

しかし、最も驚くべきことは、これら新規供給の結構な床が契約ベースでリーシング済、と言う事でしょう。掛る中で、21年及び22年の新規供給は抑制されるので、ビルオーナー側も低い空室の中で強気の賃料交渉をしている様です。

 

(5)東京以外のオフィスマーケット

東京以外の主力Marketである大阪も空室率が低い状況は不変です。特にこの1年は従来賃上げが出来てなかった中小ビルにまで波及している様です。

 

大阪は、ご存じの通り、Grand Frontの新規供給によるマーケットの弱含みを経験後、かなりオフィスの供給が絞られ、一方でインバウンドの観光客を目当てとしたホテルが次々に計画されて行きました(そして今ガンガン供給されている訳ですが。。。)。

 

景気が回復し、オフィス需要も戻った結果、空室は低下し賃料が上がったのですが、一方でオフィスの床在庫がかなり払底してしまったのです。

 

その結果、従来右肩下がりだった中小・築年数が相応経った物件でも、オーナーが「今上げないと永遠に上げることが出来ない」と考えて次々に賃上げを掛けている模様。その結果、10,000円/坪あたりの物件でも1~2千円はカジュアルに上がっている印象です。ホテルの過剰供給が叫ばれる中、またオフィス開発に先祖帰りするんじゃないか、と言う話も一部で伺います。

 

地方でのオフィス取得も強気の様です。特に福岡での話はそこそこ聞いた感はあります。地方の場合、建設コストが上昇する中で、新規物件の供給はPJとして算盤がしんどいので、既存物件でも結構賃料が取れる、従って、築30年超の物件でも結構アクイジションが成されていたイメージです。これも建築コスト高の次代を表しているのかもしれませんが。

 

2.レジ

世の中的には賃貸レジの取引はさかんでした。特に大型のレジバルクの取引です。

 

(1)Market全般(東京を中心に)

賃料の変動が大きいのは一般的にオフィスですが、足元ではレジの賃料上昇も明確に確認できます。東京都心ではシングルタイプ(25平米程度)の賃貸レジの賃料は坪17,000円程度。これはGrossでは12~13万円になります。また、ファミリー(70平米程度)では17,000~18,000円/坪といったところで、これはGrossでは33~35万円にも上ります(誰が払えるんだろ・・・)。

 

こんな中でも、稼働率は95%程度とのことなので、テナント退去後の清掃を要する部屋のことも勘案すれば実質フル稼働していると言っても過言ではありません。

 

また、上記のファミリータイプの部屋に至っては、この2年での賃料上昇が激しく、2年前は16,000円/坪程度でしたから、10%弱の賃料上昇となっている訳です。ちなみにアベノミクスが始まった13年ごろと比較した場合、14,000円/坪半ばでしたから、この5年で20%程度の賃料上昇となっている訳です(買うよりも賃貸派の人も必ずしもいつも勝てる訳では無いのですね)。

 

(2)賃料が上がる訳

さて、この背景として、景気の改善と言った要素もありますが、やはり東京への人口流入、職住近接ニーズの高まり、そんな中でも従来は分譲マンションを購入していた層が、物件価格が高くなりすぎた所為で様子見となった一方、家族の都合で移動も中々厳しく、オーナーサイドの賃上げを飲まざるを得ない、といった背景があるのかもしれません。

 

実際、この5年で価格は30%以上、坪単価では40%は上昇しているので、賃料も釣られて上がっている、と言う事が判ります。ちなみに、拙宅のマンションについて付言すると、この1年で成約価格もぐっと上がっています。個人的には嬉しいのですが、売ったら次行く所は無い、という事なので、痛し痒しです。「含み益」というのは所詮机上なので実現しなければ、実現させてそれを効果的に使わないと、どうしようもない訳です。

 

(3)地方物件

一方で、地方のレジについては、大阪においては大量供給も有りやや軟化していること、立地が弱いと築年数を経るにつれて賃料は上げるはおろか矢張り下げのトレンドが続く訳で、収益物件(そして長期保有)として考えるならば、地方への投資は難しいとは思います。

 

 

・・・疲れた。。。商業・物流・ホテルその他については後日(年内に出来るかな。。。)