不動産マーケット雑感/追記(Debtの考え方)

Capitalサイドのコメントを書いていて、元々自分の出身はDebtレンディング畑のお野菜だったなあ、と言うのを思い出して。

 

でも、不動産取得におけるDebtの考え方についてBorrower(但し、私募ファンドやREITは除く)もLenderも実際ちゃんと理解できていないんじゃないかなあって思っています。ちょっと挑発的ですが。典型的なのは借入期間の長さ、についての考え方。

 

 

1.確かに一般的には長期債権はリスクが高い

 

いや、まあ、普通の企業における運転資金貸出とか典型ですけど、ローン期間が長期になればなるほどリスクは確かに高い。実際国債含む債券も同様です(債券市場が死んでるけど、いま)。教科書的にはイールドは長期になればなるほど「ある」。

 

まあ、一般的な事業法人でも長期になればなるほど業績見込みなんて判らないですよね。ぶっちゃけ1年2年後の業績予想だってメーカーを中心に判ったもんじゃない。・・・いや、アナリスト諸兄をdisっているつもりは一ミリも無くて、マジで判らないんだ。これが。

 

昔、Bankで審査部署にいた事もあったんですよね。審査部署でも中小・中堅企業を対象とする部と大企業を中心に見る部があって、私は後者に所属しててメーカー系の企業を見てた。当時大企業の業績がリーマン後でぐちゃぐちゃになってブチ壊された後、大震災、円高、Korean企業の浸食と滅茶苦茶になって日立の史上最大の赤字の陰で電機各社の赤字が可愛くみえたりしたり。そんなご時世。で、業績見通しとか分析を結構真面目にやるんですよ。時間かけて資料探して、営業店からのヒアリングも踏まえて。証券各社のアナリストと意見交換して。シーテック行ったりモーターショー行っておネーチャン見たい気持ちを抑えてその会社の技術者と話したり、色々。

 

で、渾身の分析をする訳ですよ。外す訳ですよ。3ヶ月くらい後の四半期短信で。はい、クソー。クソですわ。うん。。。自分。

 

正直、鉄道(の鉄道事業)とか電力・ガスといった、人口×単価がトップラインになるような業種だったら兎も角、メーカー系や内需系は厳しいですね。エンタメ系とかね。昔、知り合いが西海岸にいたときにPicture Financeやってたそうで話を聞いたことがあるんですけど、「ありゃファイナンスじゃねえな。バクチ」と言っていたのが思い出深いです。

 

話は長くなりましたが、コーポレートの業績ってホントに見通しにくい。

 

なので、確かにコーポレートファイナンスの世界ではローンは短い方を銀行は志向しちゃう。・・・長い貸出の方がSpread取れるとか、固定化Swapでフィー抜けるとか邪な思いはあれど。。。

 

 

2.一方、不動産の業績(Cash Flow)見通しは

 

コーポレートはそんなノリなので、不動産への融資も長ければ長いほどリスクである、って思っちゃうんですよね。長期でこのPJってリスク何じゃないのか、と。

 

でも、収益不動産のCash Flowって一般的に賃貸需要・物件売買Marketが厚いエリアで一般的なアセット(レジ、オフィス、物流、商業、宿泊特化型ホテル)であれば、安定的な訳ですよ。一棟貸しの物件で契約自体が普通借とかだと急に退去されると大変ですが、一般的なマルチテナントで賃契も普通でMarket並の賃料水準だと空いても埋まるし。大口テナントで占められる物件でも賃契で契約不可期間や解約ペナルティが確りしていればCash Flowは少なくともコーポレートよりは圧倒的に見通し易い。

 

 

3.で、不動産融資は短い事がいいことなのか

 

過去、リーマン前もマーケットに過熱感があることは一部のAMで認識されていたことでした。なので、彼らは「マーケットが本格的にヤバくなる前に売り抜けよう」と考え、だからこそ短期でのファイナンスを考えた様です。だってその前に売り抜けるもんねー、と。また、銀行も長いとMarketの不確実性もあるしリスクだ、と思って長期のファイナンスを避けた様で。

 

で、どうなったか、というとMarketがぶっ壊れたのでExit出来ない。で、DebtのDueが来る。さあどうなるか。

 

はい、Fire Sellです。ぢごくのかまのふたが開いたぞ。

 

大体、Marketがぶっ壊れて阿鼻叫喚の最中、ヘタレのシニアレンダーにリファイナンスするのはむっちゃしんどいです。しかもMarketが良かった時のValueを元にしたLTVは物件価値が下がるとLTVも上がって、同じ水準でもリファイナンスは厳しくなる。これが仮にメザニンレンダーでも読んでた場合で、メズも正直これ無理、ってなるとリファイナンスのハードルはスカイツリーかよ、って感じになります。

 

シニアが毀損した事例はそんなに多くは無いのですが、無くは無いですし、CMBSもこの当時ガンガンデフォルトして日本においてはその後CMBSのマーケットは爆散します。・・・まあ、個人的にはFSAの方針も悪かったと思っているけど。。。メザニン?ああ、多分結構しんどかったんじゃないですかね。

 

で、そうした酷い目に合った訳ですが、不動産はサイクル物なので、一定期間を過ぎると価格が回復して今や良い値段な訳ですよ。天王洲も良い値段な訳ですよ。ええ、天王洲。あれ。クソ、あのとき苦労したの何だったんだよ。後2年待てばロスなんて無かったろ、いい加減にしろ。Cash shortするから限界だったとは言えさ、追いゼニ。。。いや、出すの厳しいけどさ、AMも知らんふりしやがって。でもレンダーが追いゼニ出してPIK付けたって回収できたよな。うん結果論だよ結果論。はいはい、クソ、今でもモノレールからあの島見ると爆破したくなるよな。

 

FxxxxxxK!!!!

 

はい、すみません。ちょっと錯乱しました。

 

でもまあ、市況を乗り越えることが出来るローンの長さだったら、Financial Covenantsに引っ掛かったって、強制売却のステージになっても、売ってもヤバいじゃん、AmendしよWaveしよ!で乗り切れば、DueまでにMarketも若干回復して何とかなる訳ですよ。

 

これらを踏まえると、不動産投資においてはローン期間は短い方がリスクが高いと思われます。想定するExitタイミングでMarketが悪くなっていたときに時期をずらす、スキップする、という選択肢が取れないからです。

 

でも、ノンリコース・リコースを含む広義の不動産ファイナンスにおける融資においてレンダーサイドですら長期はリスク高い、の頭の審査役や社内のお偉いさんが居ると、何とか期日を刻んで来ようとする。コーポレートにおけるDebt脳とでも言うべきか、ファイナンスするモノとファイナンスの意図を多分ちゃんと整理出来ていないのだと思います。そして出来ていない人は銀行員でも多いです。ぶっちゃけ。

 

 

4.普通の住宅ローンも期限の利益は長く取るべきだと思う

 

35年ローンなんてこのご時世ありえない、と言う人が散見されますが、確かに35年間の期限の利益を得ているローンなんて無茶苦茶ありがたいですね。ありがたくないですか?。与信がピッカピカの企業でも10年超えてDebt引くことって結構厳しいですからね。まあ、テールヘビーにして、実質30年返済ピッチで5年で区切ってリファイナンス前提とかありますけどね。むっちゃ貴重。ありがたみを噛みしめないと。

 

まあ、35年後に自分自身がどうなってるか判らないし、収入が維持できているかも判らない、と言うのは確かに理解できるんですけどね、そもそも35年でローンを引っ張ってもDebtと現預金を両建てにしておいて繰上返済するとかゆっくり返す、ってのを選べばいいと思うんですけどね。

 

当初20年で引いて、資金繰り厳しいから35年にするってことは借り換え以外現実的でないし大変なので、普通に初っ端から35年でレバを引いて返したければ手元資金を厚くして返しちゃう、ってのが良いと思いますね。

 

あと、FPとかやたら繰上返済進めまくる人居ますけどね、金利勿体ない云々で。でもね、いざという時にCashが枯渇した時のリスクを考えると、一定水準でDebtと現預金を両建てにしておくことって大切だと思いますね。これは資金繰りの観点ですが。

 

良く言われることですが、赤字じゃ死なないけど、資金繰りで死にます。会社も人も。

 

 

5.投資におけるDebtの考え方って真面目に考えないと

 

いやね、WACCだCAPMだのって言う話よりも前に、そもそもDebt調達・運用戦略って考えないといけないと思うのですよ。自己所有物件の購入借入とかも含め、不動産投資のDebtに対する考え方って、もう少し整理しないといけないんじゃないかな、って思います。みんな古い物差しを使っているか、別のモノを測る物差し使っているんだもん。それはあきませんわですわ。

 

ということで。

おわり。